代表取締役社長の北野英樹さんに話を伺いました
金蝶園総本家は江戸時代から続く和菓子屋です。自社で9割以上の和菓子を製造し、直営店でほとんど販売しています。多くのお客様に美味しい商品を届けたいと思っていますので、お菓子の作りおきはせず、店頭には常に出来立ての和菓子を並べています。季節ごとに毎日数十種類のお菓子があり、常にお客様の声を聴き、新しい商品をつくり、年間通すと100種類以上の和菓子を製造販売し続けています。
金蝶園饅頭と水まんじゅうです。金蝶園饅頭はお酒の発酵力を利用して、手間と時間をかけ、手作りしています。昔からの製法を守っていますので、江戸時代から変わらない味が受け継がれています。大垣は茶の湯が盛んな地域で、素朴な味が今でも愛されています。また、大垣は水の都といわれるほど、豊富な井戸水があり、その水を使って野菜や果物を冷やす風習がありました。その水の文化で生まれたのが水まんじゅうです。夏に売れるお菓子として全国から注目されています。
金蝶園総本家ではできたてで美味しい和菓子を提供することを大切にしています。そのために材料選びに力をいれること、手を抜かない製造工程、常に同じ味を提供することにこだわっています。機械で作ったほうがおいしいものは機械で作り、手で作ったほうがおいしいものは手作りしています。また、和菓子の種類によって餡を変え、独自の風味を活かしています。お菓子を最高の状態でお客様に提供するために、職人をはじめスタッフが日々工夫をしています。
伝統を守る上で大切にしていることは「伝統と経営」とのバランスです。伝統とは常に新しいものを目指す中で、結果的に変わらず、残ったものです。だから、変えていい部分と変えないで残す部分の見極めを大切にして和菓子作りをしています。新商品の開発にも、老舗感を出しながら、どこまで新しいことができるかを意識しています。これからもお客様に喜ばれる商品を作り続け、金蝶園総本家として長くお菓子作りに携わっていきたいと考えています。
お客様に満足していただくことはもちろん、働く人が誇りを持って働ける、金蝶園に勤められて良かった、と感じてもらえる会社にしたいと思っています。スタッフにはプライドを持てる仕事をするように伝えています。また、50年、100年と和菓子屋を続けていくためにも、若い職人を育てていくことは大切だと思っています。プロとして、美味しいだけではなく売れる商品をパッケージからすべて自分達で作り上げる経験をさせ、お店を盛り立ててほしいです。
私は多くの人に和菓子の魅力を伝えることが使命だと思っています。現在、子供たちが和菓子に触れ合う機会としてお菓子教室を年間30回程度開催しています。これをもっと拡大し、プチテーマパークのような楽しい店を作ることにも挑戦したいと考えています。また、大垣市には得意分野の違う老舗和菓子屋がたくさんあります。そういったお店とともに文化を作り上げ、全国に和菓子処大垣を知らしめたいです。
「伝統というのはやっぱり結果論だと思うんですね」という社長の言葉から、大垣の地域文化に根ざした老舗和菓子屋としての心意気を感じました。215年の中で、変えられるもの変えられないものを見極めながら、定番商品だけでなくその季節にあったお菓子を提供し続けていらっしゃる姿勢にご贔屓のお客様がついていくのだろうと思いました。自宅で楽しむもよし、お手土産にするもよし、大垣に誇れる和菓子屋であると感じました。夏になったら水まんじゅうを食べに並びにいこうと今から楽しみです。