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FILE.20株式会社深山

代表取締役社長の松崎英之さんにお話を伺いました

会社の設立と事業内容を教えてください

瑞浪市は機械ろくろを用いた洋食器の一大産地です。ただ、ろくろではおよそ丸い形のものしかできないんです。楕円の皿や角ばった皿など、複雑な形の食器にも需要がありましたが、地元ではそれに対応できませんでした。機械ろくろでできない磁器も、この地で作りたいという想いから昭和52年に創業しました。社名は、瑞浪にある深山山系のように、はじめは小さな芽でもやがて大きな森を形成したいという想いからつけました。その気持ちを形にするためにひとつひとつ、人の手で丁寧に手間をかけて、製品のデザインから製造に至るまで一貫して自社で手がけています。

製造方法の特徴を教えてください

私たちは磁器の中でも、薄くて光にかざすとほんのり透けて見える白磁を、鋳込みという高温焼成で製造しています。鋳込みとは、粘土を高圧で鋳型に注入して成形する、デザインの自由度が高い技術です。焼成は大きな四角い窯の中で1340度になるまで徐々に温度を上げ、酸欠に近い状態で13時間半かけて焼き上げます。また、冷却にも10時間半かけ均一に冷めるようにコントロールしています。焼物は急激な温度変化に弱いので、火を付けてから取り出すまでに、24時間という長い時間がかかります。

デザインにおいて大切にしていることは何ですか?

デザインを考えるにはまず、素材である土の性質を理解することが重要です。粘土は鋳型から取り外したときから歪みはじめ、焼成により約14%収縮します。たった一つの素材だからこそ、しっかりと向き合い、性質を熟知することが必要です。またうつわは、見た目の美しさも大事ですが、本当に大切なのは機能なんです。表面的なデザインよりも手に持った感じ、サイズ、いろいろな意味を含めて使いやすさに重きを置いています。時代に即応したデザイナーで居続けることは難しいですが、製造上、技術上の特徴を充分に理解し、追求しつづけて初めて良いデザインが生まれてきます。

技術の継承についてどうお考えですか?

職人の育成はイチから教えるというよりは、上の者につかせてやりながら覚えていきます。当社は同業他社に比べると現場にいる人の年齢もちょこっとだけ若いんです。職人にはそれぞれ良い所がありますが、それを実際どう伝えていくかって事のほうが難しいです。技術のある人が必ずしも教え上手とは限りません。高度な技術を周りの人たちにうまく伝える仲介役が重要だと考えています。また品質を維持し、納期を守るには、職人だけでは出来ません。会社全体の技術の底上げをする事が、職人にとっても、会社にとっても、お客様にとっても利益につながると思います。技術の伝承は大きなテーマですが、細かく絞ったところで伝えるようにしています。

将来の展望についてお聞かせください

もっと深山を知ってほしい、深山という名前をもっと理解してもらいたいと考えています。お客様が我々の商品を見る機会は、なかなかないと思います。展示会や百貨店の催事、自社で企画する深山感謝祭などのイベントを通して商品の良さをより多くのお客様に知っていただきたいです。そのために、これからもお客様の声を聞き、お客様を喜ばせることのできる「深山にしかできないすばらしいもの」を作り出していきたいです。

企業情報

株式会社深山

陶磁器の製造販売

住所 岐阜県瑞浪市稲津町小里940-1
URL http://www.miyama-web.co.jp/
創業 昭和52年10月

取材後記

インタビューの後、工場内での釉薬を塗る作業工程や巨大な窯を見せていただきました。「ものづくりというのは凄く楽しい!」という言葉のとおり、きめ細やかな配慮、製品へのこだわりなど、磁器の深い魅力を知ることができました。職人の世界というと、どこか強面の近寄りがたい親父さん達を想像していましたが、若い社員の方々が楽しく仕事をしている様子から、深山には自由にものづくりができる環境があると感じました。