取締役事業部長の岩崎佐一郎様に話を伺いました
戦後直ぐ、地場産業である美濃和紙にワックスを塗布した、謄写版原紙メーカーとして創業しました。謄写版印刷は孔版印刷の一種で、原紙に文字を書くとパラフィンがとれ、その穴からインクを落とし複写する方法です。当社の主力製品であるスクリーン印刷機も孔版印刷の原理で、何でも刷れるという大きな特徴を持っています。1960年頃からスクリーン印刷は産業界でニーズが高まり、当社もそちらへシフトしました。 一般的には機械だけ、インキだけという専業メーカーが多いのですが、当社がスタートした頃は創成期で全てが揃うところが無く、必然的に世界で唯一の総合メーカになりました。
スクリーン印刷は、インクがペースト状であれば、何でも刷れるわけです。つまり、インクじゃなくても刷れるわけですよね。例えば、黒いチョコレートの上に、白いチョコレートを溶かして文字を刷る。泥と金属を混ぜて貼り絵を刷って陶磁器の絵柄にする。最近では、銀をペースト状にしてミクロン単位の配線を印刷したものが、タブレットやスマホに使用されています。自動車に関しては、スクリーン印刷の技術が無ければ走らないくらいです。スクリーン印刷が使われた物を見ない日はないと思います。
絶えず新しいことに挑戦しているのは、全てお客様のニーズがあるからです。例えば、スクリーン印刷は二次曲面までしか刷れないため、ゴルフボールの様な凹凸のある面には、ぜったい刷れないんです。どうしようかなと考えた時に、そういえば三次曲面まで刷れるパッド印刷があるじゃないかという感じで、それをやりました。全ての印刷技術をひっくるめて、お客様の要望に応えたいんです。また、これまでは色を印刷していましたが、今は先端技術の機能を印刷しています。最先端のものを作るにも、我々のノウハウとお客様のノウハウとを結びつけて、一緒に臨んでいます。
わが社は特殊インクを作っていますが、環境負荷を軽くするために水性インク、つまり水を使用しています。また、印刷機では、少しでも電力の少ないものをつくろうとしています。そうやって、性質はそのまま、負荷の少ないものを作ることを常に心がけています。こういった取り組みは、特別にやっているわけではなく、当たり前のことなんです。
雇用については、郡上の人たちをできるだけ雇う姿勢でいます。企業の少ない郡上市で、雇用することによって地域を保守でき、それが何よりもの恩返しだと思っています。
われわれの業界から見ますと、グローバル化といいますか、日本を含め、中国や韓国、東南アジアは、もはやひとつの地域だという感覚がしますね。ただ、日本人が組織やルールを行動の基準とするのに対して、彼らは自分自身の基準で行動する印象があります。このように、文化の違いは大きいので、商売をするためには、彼らの背景にある文化を受け容れていかないといけませんね。
スクリーン印刷は日本の産業、製造業と共に、使われ方が変化しながら今にいたっています。「こんな技術を作りましたから買って下さい」で、成り立つ業界ではないですから。スクリーン印刷のもっているポテンシャルと言うかエネルギーを、世の中の変化を見極めながら、新しい産業に対して売り込み、新しい技術、次の市場を作っていきたい。その為には、いかにお客様とマッチングしながらやっていくか、そういう柔軟性や積極性の熱意は持ち続けていきたいと思います。国内、海外という垣根はなく、グローバルなニーズに応えた戦略、開発をし続けます。
ミノグループ様を訪問したときに、「プラスアルファがあってこそ仕事と呼べる。言われたことをやるだけでは仕事ではなく作業だ。…」という言葉が貼ってありました。これがとても印象的でした。この文章は、社長が毎年新たに書いているもので、こういう高い意識を社員全員で共有しているからこそ、長い間最先端で活躍をされているのではないかと感じました。